『どんどろ大師の場』はその大阪での一場面です。
舞台は大阪 善福寺(ぜんぷくじ)(通称どんどろ大師)の門前。
弘法大師の命日に、尼の妙天と妙珍がお参りにやってくる。
後から講中仲間のお弓も現れ、妙天、妙林二人の大阪漫才のような愉快な掛け合いが響き渡る茶店。
その中で一人盛り上がれないお弓。実はお弓には人に言えない事情が…
盗まれた主家の重宝・国次の刀探索のため、わが子と別れ、心ならずも盗賊に身をおとしていたお弓。
そこへ年端もいかない巡礼おつるがやって来る。
可愛さのあまり、あれこれと話しかけると、おつるは『父の名は阿波の十郎兵衛、母の名はお弓、3歳の時に祖母に預けられたが、生き別れになった両親に会いたい一心で阿波の国徳島から一人旅を続けております』と話しはじめた。
なんとした偶然か、おつるはお弓が六年前に、故郷に置いてきたわが子であった。
すぐにでも母である事を名乗り出たいお弓であったが、今の自分は盗賊であり、名乗ると娘に迷惑がかかると思い、必死に隠し通す。
おつるが語る母がいないが為の寂しさや一人旅での苦労を聞き、胸が張り裂けそうになったお弓は、おつるに祖母の元へ帰るようにと言い聞かせる。そのただならぬ様子におつるはお弓こそが母と察し、何でもするからこのままそばに置いて欲しいと涙ながらに訴えはじめる。
それでもお弓は母である事を認めず、断腸の思いでせめてもと宿代をもたせ、おつると別れるが今の別れは今生の別れと思い、おつるの後を追っていくのであった…
※どんどろ大師の名前の由来
善福寺は創建当初「鏡如庵大師堂」と称し大阪夏の陣の戦死者を弔うために建てられたと伝えられるお寺です。「どんどろ」とは天保五年から同八年までの大阪城代であり鏡如庵に祀られている弘法大師に深く帰依し、参拝していた土井大炊頭利位(どいおおいのかみとしつら)の「土居殿(どいどの)」がなまって、そう呼ばれるようになったと言われています。